子宮頸がんに対する当科で実施可能な放射線治療

①根治的放射線治療

  • 小さな放射線の線源を子宮に短時間挿入する小線源治療(腔内照射)と、体の外から放射線を照射する外照射を組み合わせて行います。この組み合わせにより十分な放射線を腫瘍に限局して投与することができるため特にIb~II期では高い確率で根治が期待できます。

  • Ib期からII期の扁平上皮癌では、根治的放射線治療は手術療法(広汎子宮全摘術)と同等の治療成績が得られるため、どちらの治療法も選択肢となります。

  • 患者さん、一人ひとりのご希望や全身状態、併存症の有無などを基に、産婦人科とのカンファレンスなどを通じて治療方法を検討していきます。

  • ​放射線治療の主なメリット​​

    • ​侵襲が少なく、治療効果を確認しながら少しずつ治療を行えます。

    • 手術療法で生じうる神経障害に伴う排尿障害(尿漏れなど)や出血のリスクがないです

  • 放射線治療の主なデメリット

    • 手術療法と比較し治療期間が長いです(8週間程度)。(ただしII期の手術療法では、手術後に再発予防目的の外照射を用いた化学放射線療法(6週間程度)が追加で必要となる場合が多いです。)

    • 手術療法では生じない直腸や膀胱障害(主に血便や血尿)が、治療1-2年後以降に約10%の方に生じるリスクがあります。経過観察のみですむ場合も多いですが、内視鏡によるレーザー凝固止血術まで必要となる場合(5%程度) があります。

  • III期およびIVa期では、手術療法は不適で根治的放射線治療が主たる治療となります。

  • 抗がん剤(シスプラチン)を放射線治療期間中に併用することで、治療効果の改善が得られます。

  • 外照射から開始し1日1回、総25-30回 (5-6週間)行います。消化管や膀胱などの周囲正常臓器への放射線の線量を低減する高精度な照射手法”強度変調回転放射線治療 (VMAT)”を用います。

  • 腔内照射は外照射開始後から2-4週以降に週に1回、総3-5回行います。腔内照射では子宮に器具を挿入するため、鎮静剤や鎮痛剤を用います。毎回CT画像を撮像し、腫瘍の大きさに応じて放射線の分布を最適化する下図のような”画像誘導密封小線源治療 (Image-Guided BrachyTherapy:IGBT)”で行います。

  • さらに当院では放射線治療の治療効果を高める温熱療法(後述)の併用が可能です。

 

②広汎子宮全摘術後の再発予防を目的とした放射線治療

  • 広汎子宮全摘術を行い再発リスクが高い場合に、放射線治療を追加する必要があります。リンパ節転移がある場合や癌の周囲への進展が強い場合などが相当します。放射線治療の追加により、再発を生じる確率が減少し予後が改善します。放射線治療期間中に化学療法を併用することで治療効果の改善が期待できます。

  • 当院では、高精度な強度変調回転放射線治療 (VMAT)を用いることで、晩期的な腸閉塞などの副作用の発症率を軽減しています。

 

③少数個の再発・転移に対する救済的放射線治療

  • 膣内や骨盤内リンパ節の再発、あるいは少数個(1~3個程度)の遠隔転移 (オリゴ転移を生じた場合に、薬物療法に加えて救済的な放射線治療を選択することが可能です。

  • 遠隔転移の部位は、腹部・鎖骨上・縦隔などのリンパ節転移、肺や肝臓の転移、骨転移などが対象となります。治療した腫瘍の高い制御効果が期待できます。特に5cm以下の少数個の肺転移や肝転移に対しては、定位放射線治療(ピンポイント照射)が選択できます。

 

④緩和的放射線治療

  • 他の臓器へ多数個の転移を生じている状況では、緩和的な放射線治療が適応となり得ます。子宮からの出血の止血疼痛の鎮痛、また骨転移に伴う疼痛神経症状の緩和に有効性が高いです。緩和的放射線治療に必要となる放射線量は少ないため、治療に伴う副作用は軽微です。治療期間は2週間以内が多く、状況に応じて1回のみの治療も選択可能です。通院が困難な方は、放射線治療科で入院治療も対応させて頂きます

 

⑤脳転移に対する放射線治療

  • 脳転移を生じた場合に放射線治療が有効です。当院では、強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いた定位放射線治療(ピンポイント照射)が可能です。患者さんに負担の少ない短い治療時間で、脳転移の高い制御効果が期待できます。

 

⑥温熱療法 (ハイパーサーミア)

  • 当院では、子宮頸がんに対して放射線治療や抗がん剤の治療効果を高める温熱療法を取り入れています。がんの存在する領域の皮膚表面を2方向からパッドで挟み込み高周波電流を流して加温します。パッド内の液体を還流させ、皮膚表面の熱感や痛みを抑えます。1回の加温時間は40~60分程度で、週に1~2回、放射線治療を行っている期間中に総5回程度行います。

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子宮頸癌に対するVMATの線量分布図。
赤色:50Gy, 青色:30Gy
腸管の線量低減により腸閉塞などの発症リスクを軽減します。