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肺がんに対する当科で実施可能な放射線治療

① 根治的放射線治療

I-II期の非小細胞肺癌

  • 標準術式の肺葉切除が可能な方は手術療法が第一選択となります。

  • 根治的放射線治療は、標準的な肺葉切除が困難な場合、縮小手術となる場合、または、いずれの手術療法も困難な場合、また手術を希望されない場合などに適応となります。

  • 特に末梢型のI期では腫瘍への放射線の線量集中性の高い定位放射線治療 (ピンポイント照射)を行うことで高い根治率が期待できます。治療効果は、縮小手術と同程度の成績が得られます。

  • さらに当科では、強度変調回転放射線治療 (VMAT)を用いた定位放射線治療にすることで、腫瘍により高線量の放射線を投与し、周囲正常臓器へのダメージをより軽減する手法を用いています。

  • そのため従来の定位放射線治療と比較し高い治療効果と少ない副作用の両立が期待できます。通院可能な方は、総5回程度の外来通院で治療完遂が可能です。

  • 患者さん一人ひとりのご希望や全身状態、併存症の有無などを基に、呼吸器外科、呼吸器内科との呼吸器腫瘍カンファレンスなどを通じて治療方法を検討していきます。

 

   

III期の非小細胞肺癌

  • 肺葉切除やリンパ節郭清などの手術療法が困難な場合に根治的放射線治療を行います。

  • 抗がん剤を同時に併用することで治療効果が高まります(化学放射線療法)。

  • 強度変調回転放射線治療 (VMAT)を用いて、腫瘍への線量集中性と正常肺や心臓の線量を低減する高精度な照射を実施しています。心臓の機能障害や放射線肺臓炎などの副作用リスクの軽減が期待できます。

  • さらに当院では、放射線治療効果の改善を目的に温熱療法(後述)の併用が選択可能です。

  • 治療期間中の腫瘍縮小に合わせて治療プランを複数回変更する適応放射線治療 (Adaptive Radiotherapy)を行っています。

  • この手法により、治療効果に応じた個別化された治療が可能で、より高いレベルでの腫瘍への線量集中性と副作用リスク低減の両立を追求しています。

  • 化学放射線療法を終了後に免疫チェックポイント阻害薬を投与することで、根治率が上昇します。また手術療法が実施可能となった場合に、遺残する腫瘍に対して救済切除を行う場合があります。

限局型の小細胞肺癌

  • 根治的な放射線治療を行います。抗がん剤を同時に併用することで治療効果が高まります(化学放射線療法)。1日2回の放射線照射を約3週間行います。 

  • 化学放射線療法後に良好な腫瘍縮小が得られた場合には、脳転移の出現予防に脳への放射線治療の追加が有効です(予防的全脳照射)。

②手術療法後の再発予防を目的とした放射線治療

  • 手術で摘出した肺がんの遺残がある場合、周囲への浸潤が強い場合、またリンパ節転移が多発していた場合などに、再発予防を目的とした放射線治療を行います。

  • 再発や転移を生じるリスクが高い場合には、抗がん剤を併用することがあります。

 

③少数個の再発・転移に対する救済的放射線治療

  • 治療した肺やリンパ節(鎖骨上、縦隔や肺門)の再発、または少数個(1~3個程度)の遠隔転移を生じた場合 (オリゴ転移) に、薬物療法に加えて救済的な放射線治療を選択することが可能です。

  • 遠隔転移の部位は、肺や肝臓の転移、骨転移などが対象となります。治療した腫瘍の高い制御効果が期待できます。

  • オリゴ転移を対象とした最近の臨床試験では、全身治療に局所治療(放射線治療または手術)を追加することで無増悪期間の改善が得られることが示されています。

​④脳転移に対する放射線治療

  • 脳転移を生じた場合に放射線治療が有効です。

  • 当院では、強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いた定位放射線治療(ピンポイント照射)が可能です。患者さんに負担の少ない短い治療時間で、脳転移の高い制御効果が期待できます。

 

​⑤緩和的放射線治療

  • 肺がんによる血痰疼痛呼吸苦、また骨転移に伴う疼痛神経症状といった症状の緩和に有効性が高いです。

  • 緩和的放射線治療に必要となる放射線量は少ないため、治療に伴う副作用は軽微です。

  • 治療期間は2週間以内が多く、状況に応じて1回のみの治療も選択可能です。

  • 通院が困難な方は、放射線治療科で入院治療も対応させて頂きます

⑥温熱療法 (ハイパーサーミア)

  • 当科では、肺がんに対して放射線治療や抗がん剤の治療効果を高め温熱療法を取り入れています。

  • がんの存在する領域の皮膚表面を2方向からパットで挟み込み高周波電流を流して加温します。パッド内の液体を還流させ、皮膚表面の熱感や痛みを抑えます。

  • 1回の加温時間は40~60分程度で、週に1~2回、放射線治療を行っている期間中に総5回程度行います。

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VMATを用いた定位放射線治療により腫瘍辺縁部 (60Gy) から腫瘍中心部 (100Gy)にかけての大幅な線量増加と正常肺に照射される肺線量の低下を高いレベルで実現。
図2.png
​治療の進行とともに縮小する腫瘍や、正常臓器の位置の変化に応じて、照射プランを変更していく適応放射線治療 (Adaptive radiotherapy)。
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