乳がんに対する当科で実施可能な放射線治療

①乳房部分切除術後の放射線治療
 

  • 乳房部分切除術を行った場合には、残存する乳房内の再発を予防するために放射線治療が必要です。放射線治療を行うことで乳房内再発の減少や予後の改善が得られます。

  • 切除した癌の病理検査の結果や再発リスクの程度により、放射線を照射する回数や範囲が変化します。比較的多く選択するスケジュールは、残存する乳房全体への放射線治療を、1日1回、週5回、総25回 (5週間)を行い、その後、癌を切除した部分に限局して8回追加するものです。通院に支障がなければ外来で治療を行います。主な副作用は、治療開始後4週目頃から生じる照射部の皮膚炎(皮膚の発赤)ですが、日常生活への影響は少ない場合がほとんどで、治療終了1ヶ月後には概ね消失してきます。

  • 当科では、心臓に近い左乳癌では、体表面光学式トラッキングシステムにより深吸気息止め照射(Deep Inspiration Breath Hold:DIBHの選択が可能です。心臓への照射線量を低減でき、心臓の晩期障害の発生リスクを軽減できます。

 

 

 

 

 

 

 

②乳房切除術後の放射線治療
 

  • 乳房切除術を行い再発リスクが高い場合に、放射線治療を追加する必要があります。リンパ節転移がある場合や癌の周囲への進展が強い場合などが相当します。放射線治療の追加により、胸壁やリンパ節に再発を生じる確率が減少し、予後が改善します。

  • 心臓に近い左乳癌では、体表面光学式トラッキングシステムにより深吸気息止め照射(Deep Inspiration Breath Hold:DIBH)の選択が可能です。心臓への照射線量を低減でき、心臓の晩期障害の発生リスクを軽減できます。

 

③少数個の再発・転移に対する救済的放射線治療

  • 胸壁や残存乳房、リンパ節 (鎖骨・腋窩)の再発、または少数個(1~3個程度)の遠隔転移を生じた場合 (オリゴ転移) に、薬物療法に加えて救済的な放射線治療を選択することが可能です。遠隔転移の部位は、骨転移、肺や肝臓の転移、リンパ節転移などが対象となります。治療した腫瘍の良好な縮小長期の局所制御が期待できます。

  • 過去に放射線治療が行われた残存乳房や胸壁の再発では、十分な量の放射線治療を投与できませんが、手術による摘出が困難な場合に再度の放射線治療(再照射)が選択肢となります。当院ではより腫瘍に対して高精度に放射線を限局させる強度変調放射線治療(IMRT)を用いることや、温熱療法(後述)の併用により、治療成績の改善を試みています。

 

④脳転移に対する放射線治療

  • 脳転移を生じた場合に放射線治療が有効です。当院では、強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いた定位放射線治療(ピンポイント照射)が可能です。患者さんに負担の少ない短い治療時間で、脳転移の高い制御効果が期待できます。

⑤緩和的放射線治療

  • 他の臓器へ多数個の転移を生じている状況では、緩和的な放射線治療が適応となり得ます。乳癌からの出血の止血上肢浮腫の改善鎮痛などが期待できます。骨転移に伴う疼痛の鎮痛、神経症状の改善や骨折の予防にも有効性が高いです。緩和的放射線治療に必要となる放射線量は少ないため、治療に伴う副作用は軽微です。治療期間は3週間以内が多く、状況に応じて1回のみの治療も選択可能です。通院が困難な方は、放射線治療科で入院治療も対応させて頂きます

⑥温熱療法 (ハイパーサーミア)

  • 当院では、乳癌の再発・転移病変に対して放射線治療や抗がん剤の治療効果を高める温熱療法を取り入れています。がんの存在する領域の皮膚表面を2方向からパットで挟み込み高周波電流を流して加温します。1回の加温時間は40~60分程度で、週に1~2回、放射線治療を行っている期間中に総5回程度行います。

  • 特に乳癌の局所再発病変は、体表面近くに存在するため、腫瘍の良好な温度上昇が得られやすく放射線治療の効果改善が得られやすいです。

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天井に設置された体表面光学式トラッキングシステム
a) 体表面スキャン画像と胸壁(赤色)および腹壁(青色)の位置検出に用いるROI。b) 胸壁および腹壁の動きのモニター画面。
体表面光学式トラッキングシステムにおいて胸壁の動きをモニターするために患者さんが装着するゴーグル画像
内胸リンパ節領域も含めた照射。従来の自由呼吸と比較しDIBHにより心臓と乳房の間の肺の拡張が得られ、心臓 (緑色線) や冠動脈 (黄色線)の線量低減と同時に内胸リンパ節領域の線量の確保が得られている。​​
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