1. はじめに
放射線治療は、手術と並ぶがんを治療する方法です。
放射線治療で多くのがんを治せます。(放射線腫瘍学会リーフレット 一般の方向けの詳細)
当院では年間、約1,000例の放射線治療を行っています。
「仕事を続けながら治療できるのか」
「副作用はどのくらいか」
「本当に効くのか」
多くの患者さんがこうした不安を抱えて来院されます。
私たちは、がんを制御するだけでなく、生活を守りながら治療を行うことを目標としています。
2. 治療の実際
照射は1回あたり数分で終了します。
何も感じずに横になっているだけで終わることがほとんどです。
照射前には位置を確認するためのCT撮影を行い、毎回ミリ単位でズレを補正してから照射します。
通院治療では、多くの患者さんが、治療後そのまま帰宅し、普段の生活を続けています。
治療全体の流れ
① 初診・方針決定
画像や病状をもとに、手術・薬物療法も含めた最適な治療を検討します。
② 治療設計
CTやMRIを用いて、ミリ単位で治療範囲と線量を決定します。
③ 照射(通常は数分/日)
週3~5日、数週間にわたり通院あるいは入院で行います。
④ 治療終了後のフォローアップ
効果や副作用を確認しながら、継続的に診察します。
治療設計
放射線治療では、「がんをしっかり治すこと」と「副作用を抑えること」のバランスが重要です。
広く・強く照射すれば再発は防ぎやすくなりますが、副作用が増えます。
逆に、狭く・弱いと再発のリスクがあります。
私たちはこのバランスを、がんの種類や進行度、患者さんの生活状況に合わせて調整し、最適な治療を設計しています。
放射線治療は単独で行うだけでなく、手術や薬物療法と組み合わせて行うことも多くあります。
外科医や他の診療科の医師と連携し、患者さんにとって最も適した治療をチームで決定します。
放射線治療の最前線:ミリ単位の「設計図」と「熱」でがんに挑む
放射線治療が選択されることが多いケース
・手術を避けたい方
・体への負担を抑えたい方
・高齢の方
・限られた転移(オリゴ転移)の方
などで有効な場合があります。
私たちは、がんだけでなく、患者さん一人ひとりの「これまでの生活」と「これからの時間」を守る治療を目指しています。
ここから先は、少し詳しく説明します。
(詳しく知りたい方・医療関係者向け)
がん種別の放射線治療の適応の詳細は、こちらをクリックして下さい。
肺がん、乳がん、膵がん、食道がん、喉頭がん、咽頭・鼻のがん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、腎がん、大腸がん、肝臓がん、胆のう・胆管がん、胃がん、脳腫瘍、皮膚がん・悪性黒色腫、小児脳腫瘍、小児固形腫瘍
マルチリーフコリメータ(MLC) (エレクタ社 AgilityTM)
治療設計

3. 高精度放射線治療
現在では大部分の治療で高精度放射線治療が用いられています。
マルチリーフコリメータ(MLC)と呼ばれる照射する範囲を調整する装置とCT画像を用いて、がんと体内の各臓器に照射される放射線量を、3次元的に設計します。

放射線治療
放射線を照射する範囲を調整する装置です。
5mm幅の放射線を遮蔽する金属板が独立して駆動し、病巣の形状に一致した照射範囲を形成します。
CT画像を用いて放射線を照射するターゲットとリスク臓器との3次元的な位置関係を把握します。
治療目的、組織型、進行度、併用治療などに基づきターゲットやリスク臓器の線量や照射回数、MLCによる照射範囲、放射線の線質、入射方向などを決定します。
強度変調放射線治療 (Intensity Modulated RadioTherapy; IMRT)
放射線治療は多くの場合、複数の方向から人体に放射線を照射しますが、従来法の3次元照射では各方向(下図の青矢印)で設定するMLCの形状は一定です。
IMRTでは、各方向のMLCの形状を多数設定することで、より複雑な放射線の線量分布作成が可能となります。
3次元照射(従来法)
IMRT

3次元照射(左)と比較し、IMRT(右)では腫瘍標的の形状に一致した線量分布の作成が可能で、腫瘍標的の線量増加と正常臓器(上図では直腸)の線量低減がより高いレベルで実現できます。
強度変調回転照射法 (Volumetric Modulated Arc Therapy: VMAT)
VMATは各方向からの照射を固定せずに回転させながら行うIMRTです。MLCを回転に合わせて経時的に動かし、かつ回転速度や放射線の線量率を変化させ最適化します。
従来のIMRTと比較し、より良好な線量分布と照射時間短縮の両立が可能です。当院では2019年7月の導入以降、多くの患者さんに実施しています

当院のVMATが可能な放射線治療装置 (Versa HD™)
短時間照射を実現する高精度な回転照射と定位照射専用機と同等の小さなターゲットに対する急峻な線量分布を実現可能です。

VMATを用いて海馬を回避した予防的全脳照射
小細胞肺癌で実施する予防的全脳照射の線量分布です。海 馬の照射線量を10Gy以下(青色部分)に軽減することで、認知機能障害の発症リスクを改善します。
定位放射線照射 (StereoTactic Irradiation: STI)
3cm以下の小さな病変に対して大線量の放射線を腫瘍部位に限局して、短期間に照射する方法です。
ピンポイント照射とも呼ばれ、脳転移や早期肺癌などに行います。手術に匹敵するような病変の高い制御効果が得られます。
特に脳転移では、前述のVMATと組み合わせることで、多発するような脳転移に対しても短時間で実施することが可能となり、患者さんの負担軽減につながっています。
VMATを用いた脳定位放射線治療 (VMAT-STI) の線量分布図

計4ヶ所の多発する小さな脳転移(赤色の部分)に大量の放射線をピンポイントで同時に照射します。
従来の放射線治療装置では1時間を超す照射時間が必要でしたがVMATにより10分程度で実施することができます。
画像誘導放射線治療 (Image Guided Radiation Therapy: IGRT)
より正確に照射を実施するため照射位置の検証や補正を行う各種の画像誘導放射線治療 (Image Guided Radiation Therapy: IGRT)を用いています。


照射台で治療の照射直前にCT (cone beam CT)を撮像し、治療計画を実施したCTと重ね合わせることで照射位置のズレを検出し、補正した後に治療を実施します。IMRTやVMATの精度を担保するために重要な技術です。
体表面光学式トラッキングシステム(Catalyst™)を用いた深吸気息止め法による乳癌の放射線治療


体表面光学式トラッキングシステムにより深吸気息止め照射(Deep Inspiration Breath Hold:DIBH)を行うことで心臓の照射線量を低減でき、心臓の晩期障害の発生リスクを軽減します。
特に乳癌の手術後に行う放射線治療において有効な技術です。
このような高精度放射線治療により周囲の正常臓器への放射線量を低減し、腫瘍に放射線を集中させることが可能です。
がんへの強力な局所効果とより少ない副作用の両立が期待できます。
4. 温熱療法の併用
標準的治療である抗がん剤を同時併用する化学放射線療法や高精度放射線治療の治療効果の改善が必要な病態に対して温熱療法の併用が選択可能です。
局所進行性の子宮頸癌、膵癌、非小細胞肺癌、高リスク群の前立腺癌、再発直腸癌などに、週に1~2回、放射線照射後に1回50分の加温を行います。
詳細は温熱療法のページをご参照ください。
5. がん種別の放射線治療の適応の詳細は、こちらをクリックして下さい。
肺がん、乳がん、膵がん、食道がん、喉頭がん、咽頭・鼻のがん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、腎がん、大腸がん、肝臓がん、胆のう・胆管がん、胃がん、脳腫瘍、皮膚がん・悪性黒色腫、小児脳腫瘍、小児固形腫瘍
関連内容
